
法 務 会 計 総 論
法務会計研究会のメンバーは、増加しているが、はたしてどれだけの方がその基本理念をご理解されているのか、疑問に思うときがある。そこで、ここで少しお話しさせていただこうと思う。法務会計とは、財務・法律・経営の三つを総合的にコンサルティングする手法であり、「会計」と名が付くと、あたかも記帳を考えがちのようである。
しかし、記帳は必ずしも必要ではなく、財務管理、一言で云えば資金繰りについてコンサルティングを行い、経営の発展に貢献しようとするものである。よって、記帳をしない顧問契約も至極当然であり、記帳を行う場合でも決算や申告が目的となっては、他の会計事務所等と同じであり、クライアントから見てあまり魅力がない。
法務会計が附随して行う記帳業務は、資金繰りや利益の向上のための資料を整えることが目的であり、決算や申告は付随業務に過ぎない。
このところを押さえておかないと、顧問料も高く請求できず、顧客満足も低い。さて、では、法務会計の中心的業務とは何であろうか?それは、前述したように、資金繰り(キャッシュフロー)と利益の向上である。
中小企業のオーナーには、対応しなければならない様々な問題が日々生じている。資金繰りに直接影響する、売掛金の回収、買掛金の支払い方法、次に銀行等からの融資、或いは事業承継・相続対策など。
最近では、PL法から消費者契約法など、損害賠償も身近かなこととなり、これにコンプライアンスの対応も求められる。そのため、予防法務も重要であるとの認識も一般化してきている。しかし、中小企業にとっては、限られた人的資産のため対応できず、非常に不安定な経営を強いられている。
先日、法律専門職たる、ある行政書士から聞いたことであるが、記帳業務を行っていたある顧問先に対し、税理士から月額報酬1万円でいい、との営業を受け、奪われてしまったとのことであった。そんな小さな記帳業務には固執せず、我々法務会計を実践する法律専門職は、資金繰りと利益のために直接働きかけなければならない。
会計記帳や決算は、どんなに努力してもほとんど資金繰りや利益には影響を与えない。よって、報酬の値引きでもしないと仕事を獲得できないのである。
それに対し、資金繰りや利益に直接影響を与える法務会計では、成功報酬的な高額顧問料を獲得できるのである。まず、顧問先に儲けさせ、我々も儲けさせて頂くのである。このところをしっかり押さえておかないと、成功はおぼつかない。会社にとって利益を与えてくれる法律専門職を顧問先が手放すはずがない。
では、顧問料はどのくらいを望めるのであろうか?それは、どれだけ利益に貢献できたかにより判断すればいいのであるが、ここに皮肉な現実がある。
それは、手間のかかる記帳業務を行う顧問先より、記帳業務をしない顧問先の方が報酬が高いということである。記帳をしないことで、コンサルティングに集中でき、顧問先も資金繰りなどの財務問題や法律問題を法律専門職により期待するようである。事実、小職の場合でも、記帳業務を含み顧問契約しているところの最低報酬は現在15,000円であるが、記帳業務をしない顧問契約の場合のそれは、5万円を下るところはない。たとえ個人事業主であっても、それだけの報酬を支払ってもらえる。
要は、頂く報酬以上に顧問先に対し利益を与えればいいのである。そのためには、社長と一緒に悩み、苦しみ、時には戦う覚悟も必要である。
税金・経営・法律はもとより、成功哲学も要求される。自分自身が日々成功することへの情熱を抱き、成功するための環境を整え、成功するためのヤル気(波動)を養い、かつ、顧問先に対してそれらを発することが結果的に顧問先に利益をもたらすのである。
よって、法務会計を実践する者、或いは志す者は決して貧乏であってはいけない。何もお金だけの問題ではない。各自、身の回りで考えてみて頂きたい。お金はたくさんあっても、楽しい日々を送っていない人や豊かな人生とは無縁の人が必ずいるものである。
これは、何故であろうか?それは、貧乏だからである。心が貧しかったり、性格が歪んでいたり、心が健康でないからである。
では、成功とはなんであろうか?様々な定義があるが、まず掲げたいのは「心の安らぎ」である。心に安らぎを持ちながら毎日を送れる人、これが成功者といえる。
お金はそのための一つの要素にすぎない。だから、お金だけでは成功できないし、お金なくして成功もできない。
法律専門職の事務所経営にもこの点が考慮されていれば、経営を危ぶまれることもないであろう。
平成14年12月3日
法務会計研究会
会長 池松 伸一